海外生活を経て帰国したご家庭では、お子さまの進学について頭を悩ませることも多いのではないでしょうか。
「せっかく身につけた英語力を帰国後も伸ばしてあげたい」
「海外生活が長いので、日本の学校生活にうまくなじめるか不安」
といった理由から、帰国子女枠での中学受験を検討される方が増える一方、入試で問われる英語力やその他主要教科の学力不足など、さまざまな不安があるようです。細かい点については別の記事で紹介するとして、今回は帰国子女の中学受験について、大枠をわかりやすく紹介します。
◇帰国子女とは◇
ひと言で『帰国子女』といえど、海外での通学校により日常の学習環境に大きく差があるので、勿論個々人によってその個性は様々です。しかし、筆者が考えるに大きく分けて以下の3種類になります。
①英語圏(欧米圏)の現地校へ通学していた生徒
②非英語圏のインターナショナルスクールに通学していた生徒
③英語圏・非英語圏関わらず日本人学校に通学していた生徒
要は、毎日の学校生活を英語で送ってきたか、日本語で送ってきたかの違いになります。
帰国子女入試(帰国生入試)とは、海外生活の経験を持つ帰国子女を対象に、一般生とは別の枠で実施される入試のことです。自校のグローバル化やダイバーシティー化を推進したり英語力を強化するため、多くの私立中学が受け入れ体制を整え、特別枠を設けています。
ただ、学校側も各国の学習環境を既に知っているので、各校が帰国子女に求める要件に違いがあります。求められる能力について、上記①~③のタイプ別に分けて紹介していきます。
①②に該当する生徒に必要な能力
実用英語
大学入試改革において「英語によるコミュニケーション能力の向上」が目的のひとつに掲げられるなど、英語運用能力の重要性はますます高まっています。このような国の方針を受け近年の私立中学では、高い英語力を持つ生徒を求める傾向が高まっています。当然、英語圏での海外生活を経験した帰国子女には現地で培った「実用英語」の能力が期待されています。
③に該当する生徒に必要な能力
国際感覚
英語圏に限らず、海外の現地校や日本人学校で学んだ帰国子女には、多様な価値観を受け入れる柔軟性や高い自己表現力など、海外生活で身につけた豊かな人間性が求められます。帰国子女を受け入れる学校としては、さまざまなバックグラウンドを持つ生徒を集めることで教育環境のダイバーシティー化を推進し、国際社会で活躍できる人材を育成することを目的としています。事前提出書類として『海外生活で経験した事』などをテーマに日本語作文を求められ、その後入試当日に学科試験とは別に面接試験を設けて、提出書類と齟齬が無いかを確認する学校が多いです。
①②③全てに該当する
ひと言でいうと『学力』になります。
特に、進学校・早慶付属校・国立附属校といったトップ校では、一般入試とさして差の無い難易度の帰国子女入試が実施されております。勿論、学校によりけりですが、人気の学校においては倍率も約3倍以上と狭き門になっています。一般入試で合格できるくらいのペーパーテストにおいての学力が必要になりますので、よく考えて学校選びをすることが大切です。
◇帰国子女枠での中学入試の概要◇
帰国子女枠で中学受験するために、知っておきたい基本的な情報を紹介します。
ただし、出願に必要な資格要件は各校で大きく異なります。また年度ごとに変更される可能性があるので、気になる学校があればホームページを確認したり、入試要項を取り寄せるようにしてください。分からないことや資料で不透明な部分は、必ず直接学校に問い合わせてみる事が必要です。
出願資格
出願資格として「海外滞在年数」を設定する学校が多く、「1年以上」「2年以上」「3年以上」など、その基準は学校によって様々です。また、滞在年数の算出は「継続」か「通算」かについても学校によって規定があるので注意が必要です。「帰国後の年数」についても各学校に違いがあります。注意すべき点は、資格が少し足りていない場合でも必ず問い合わせることです。学校によっては、考慮してくれる場合も多々あります。
入試日程
首都圏にある私立中学の一般入試解禁日は2月1日ですが、帰国子女入試は年内の10月から開始されます。2月1日以前に入試を行っている中学校は、帰国子女入試を一般入試とは切り離して実施しています。ですので、年内に『抑え』として帰国子女入試を受験して、『本命』を2月1日以降の一般受験に照準を合わせていくというのが基本的なスタイルになります。あくまで、帰国子女入試は選択の幅を広げる機会であり、最終的な学力照準を合わせていくターゲットとはなりません。
受験科目
一般入試の科目は、4教科(国語・算数・社会・理科)か2教科(国語・算数)となります。帰国子女入試では、一般入試と同様の形式か、それとは異なる2教科に英語を加えた3教科・英語のみの1教科・作文やエッセイライティングを含めた3教科など多種多様です。お子様が得意な形式で勝負するというのが戦略になります。
◇志望校の選び方◇
志望校を選ぶ際には、中学でどのような活動に力を入れたいのか、何を中心に学びたいかなど、親子で話し合ったうえで慎重に選びましょう。受験を検討している学校の文化祭やイベントに足を運び、実際の雰囲気を感じてみるのもおすすめです。海外在住の場合は特に情報が手に入りにくいので、長期休みや一時帰国の際には、説明会などにできるだけ参加しておきましょう。
◇学校の特色を調べる◇
帰国子女を受け入れている私立中学は増える傾向にあり、なかでも帰国子女の割合が高い「慶應湘南藤沢中学校」「頌栄女子学院中学校」や、帰国子女のみのクラスを設け、英語力の向上に力を入れている「広尾学園中学校」「攻玉社中学校」などが人気を集めています。教育理念や指導方法は中学によって大きく異なり、一般生と同じクラスで学びながら、英語の授業だけは帰国子女が集まって行う「取り出し授業」を行う学校や、留学制度や海外研修制度が充実している学校など、それぞれに特色があります。中学進学後も英語に触れる環境で学びたいのか、多様な学びを幅広く吸収したいのかなど、お子さまの希望を明確にしておくことが大切です。
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